SM1P風向風速計の製作例

SM1Pは風向風速計ユニットWM5と、電圧レギュレーター基板(WM5-P)とRS232Cインターフェース基板(WM4-232)を組み合わせて製作します。
WM5の電子回路基板は組立調整済みで、二次加工が必要な塩ビパイプも加工、組み立て済みです。
風向風速計ユニットをポールに取り付けるためのパイプなどの下部構造は別途購入および組み立てる必要があります。


SM1P製作に用いる風向風速計ユニットとプリント基板キット


風向風速計ユニット WM5

組立調整済みです

電圧レギュレーターキット WM5-P

部品をはんだ付けして組み立てます。取付け用のネジ穴はφ3です。

RS232Cインターフェースキット WM4-232

部品をはんだ付けして組み立てます。取付け用のネジ穴はφ2です。

上記以外に調達が必要な部品や製作方法は下記の製作手順を参考にしてください。
キットに含まれない部品の一部はリストの右に( )で試作した時の調達先を参考のため書いてあります。



製作手順


風向風速計WM5を逆さにすると4つの金属スペーサーが取り付けられていて、それぞれS1,S2,S3,S4の記号が記してあります。
S1,S3はGNDおよび5V電源で、S2,S4はTTLレベルのRXin,TXoutです。
パソコン等のホスト機器との配線が短くて5V±5%の電源を供給でき、TTLレベルのインターフェースができる場合はWM5-P基板とWM4-232基板の接続を省くこともできます。(SM1配線図参照)

風向風速計とホスト機器との配線が長くなる場合は、電圧レギュレータのWM5-P基板とRS232CインターフェースのWM4-232基板を風向風速計とホスト機器との間に入れる必要があります。
WM5-P基板とWM4-232基板の取り付けはユーザー側で工夫してください。
写真の例では、ユニバーサル基板を塩ビ管の内側に納まるようにカットして電圧レギュレーター基板とWM4-232基板を取り付け、さらにケーブルの着脱が容易となるようにターミナルブロックを取り付けています。

キット以外のもの
ユニバーサル基板
ターミナルブロック (秋月電子通商)
取り付けネジ
プリント基板とユニバーサル基板の間のスペーサー

左はWM5-P基板とWM4-232基板を取り付ける前のユニバーサル基板です。
八角形にカットしようとしたのですが、適当にざくざく切っているうちにいびつになってしまいました。
スペーサーの位置に合うようにネジ穴を開け、さらに電圧レギュレーター基板とRS232C基板の取り付け用の穴を開けてねじ止めしています。
WM5-P基板のネジ穴は3mm、WM4-232基板のネジ穴は2oと穴径が違いますのでご注意ください。また、ユニバーサル基板にねじ止めするときに、スペーサーを入れずにねじ止めすると基板が割れることがありま す。
真ん中の穴はコネクターからの配線をユニバーサル基板の下に通すためのもので、配線はターミナルブロックの端子にはんだ付けします。

IL-Gコネクターのコンタクトにリード線を圧着してコネクターをサブアッシーします。
WM5-P基板のIL-G-4コネクタの二つのピンとWM4-232基板のIL-G-3コネクタの一つのピンは使われないのでピンを挿入していません。
リード線はAWG24が適合します。また、圧着は専用の工具を使わないと難しいです。
写真の例では、ENGINEER製の精密圧着ペンチPA-20でIL-Gコネクターのコンタクトを圧着しています。
丸穴の圧着端子の圧着は大雑把でよいので、普通のペンチで圧着しました。

キット以外のもの
AWG24リード線 10本 (秋月電子通商)
精密圧着ペンチ (MONOTARO)
圧着端子(R1.25-2) 4個

コネクターを実装した様子。(表)

コネクターからの配線をターミナルブロックにはんだ付けした様子。(裏)

風向風速計とパソコン等のホスト機器を繋ぐための電源ケーブルとRS232Cの接続ケーブルはユーザー側で別途用意する必要があります。
左の写真の例では10mの4芯インターホンケーブルで、電源のGNDとRS232CのGNDは共通にして配線しました。
インターホンケーブルは、下に引っ張られたときにターミナルブロックに直接負荷がかからないよう、スペーサーをひとまわりさせています。
また、風向風速計をポールに取り付けやすくするため、20pほどの長さにカットした塩ビ管を通して接続しています。
呼び径65のVP管またはVU管が適合し、ホームセンターなどで購入することができます。

キット以外のもの
インターホンケーブル (カインズホーム)
下部塩ビ管 (カインズホーム)
シリアル通信は3Wire方式ですので、RS232Cコネクターの配線は図のように配線してください。
また、全体の配線はSM1P配線図を参考にしてください。

長い配線のために電源電圧が低下してしまう分、高めの電圧を供給して電圧レギュレーターで5Vに安定化する仕組みです。供給電圧はコンデンサの耐圧が10Vですので、9Vまでを上限としてください。
左の例では6VのスイッチングACアダプターから電源を供給しています。
供給電圧が高い場合はレギュレーターが熱くなりますので、放熱板が必要になるかもしれません。
最近のパソコンはRS232Cコネクタを備えていないので、USB-RS232C変換ケーブルを用いてパソコンと接続しまし た。

キット以外のもの
スイッチングACアダプター (秋月電子通商)
DCジャック (秋月電子通商)
インターホンケーブルに取り付ける4ピンコネクタ
USB-RS232C変換ケーブル (秋月電子通商)
Dサブ9ピンコネクター (RSコンポーネンツ)
3ピンコネクター
Dサブ9ピンコネクターと3ピンコネクターの間の配線
DCジャック、4,3ピンコネクター用のユニバーサル基板 (秋月電子通商)
風向風速計を設置するときに北の方角を合わせやすいように印を付けます。
取扱説明書の図のように、北の方角は風向風速計の中心から見てスペーサーS3からS2の方に11.25度回った位置ですが、角度で印を付ける位置を決めるのは難しいのでS3の位置からS2の方に8mmずれた場所に印を付けるとやり易いでしょう。

パソコンに接続できたら通信をテストします。
この例ではターミナル通信ソフトのTera Termを使っています。
初期設定では9600bpsコマンド&レスポンスモードですので、Tera Termを左のように初期設定します。

1をタイプするとそのときの瞬間風向風速を返してきます。

S30とタイプすると9600bpsのままNMEA通信モードになりますが、リセットするまでは反映されません。
続けてRをタイプすると風向風速計がリスタートしてNMEAセンテンスを3秒おきに送信してくるようになります。
アルファベットの大文字小文字を区別しますので、CapsLockして大文字で入力してください。

元のコマンド&レスポンスモードに戻すにはS34Rとタイプします。
タイプしている途中にNMEAセンテンスが来てしまっても、かまわずタイプし続ければちゃんとコマンドを受けてリスタートしてくれます。

全体の組み立てが終わったら試運転してください。
風向風速計本体の近くに物を置かず、外からの風が入らないように締め切った室内で無風時の風速を測定します。
エアコンなどの風も当らないように使用を避けてください。
風向風速計本体は組み立て調整済みでキャリブレーションも済んでいますが、無風なのに瞬間風速が0.3mを超えるような場合はキャリブレーションし直してください。
パソコンから風速を読み取る手順とキャリブレーションの手順はWM5取扱説明書をご参照ください。

風が吹いているときのテストは、ちょっとおおざっぱですがドライヤーで冷風を当ててみてください。
温風は当てないようにしてください。正しい風速が測定できないだけでなく、故障の原因になることがあります。

用意しておいた塩ビ管を下部VUキャップに嵌め込み、Lアングルに金属バンドで固定し、さらにLアングルを金属ポールの物干し竿の先端にインシュロックタイで縛り付けて固定しました。
インシュロックタイは樹脂なので長期間の固定には向きません。全部金属バンドを使った方がいいと思います。

キット以外のもの
インシュロックタイ (カインズホーム)
金属バンド (ジョイフル本田)
金属ポール

風向風速計本体に付けた北マークにポールの取り付け位置を合わせて設置方位を決めやすいようにしました。


ベランダから屋根の上に出るように立ててみました。

インターホンケーブルを屋内に引込んでパソコンに接続しました。
1をタイプする度に現在風向風速を表示できます。
また、2をタイプすると最新の2分間平均風向風速と最大瞬間風向風速を表示します。
左の画面では、1と2をタイプした後、NMEAモードに切り替えて連続して瞬間風向風速を取得してみました。
瞬間風向風速の測定は3秒毎なので、3秒おきに送られてきます。また、NMEAフォーマットに合わせるために風向が角度表記になっています。

大雨の日に超音波信号の同期外れが起きて正しく計測できなくなってしまったので、どのように不具合が発生するか調べるためにいったん風向風速計を下し、シャワーを浴びせる実験を行いました。
実験の結果、水滴の跳ね返りがセンサー窓から中に飛び込んで超音波トランスデューサーに付着した場合発生することがわかりました。
部品として防滴性のない開放型トランスデューサーを採用してなお防滴性を確保するために現在のような構造にしてあるのですが、完全な防滴性を確保するのは難しいようです。
センサーが乾くのを待ってから再起動すれば回復するので、雨水の跳ね返りによる水濡れでトランスデューサーがただちに故障することにはならないようですが、部品の寿命には影響がありそうな気がします。