WM10完成後のオシロスコープを用いたチェック手順


キャリブレーションしてもその直後の無風における風速の測定結果が0.5m/sを超える場合はトランスデューサーからマイコンに至るまでの配線に不具合があると思われます。
超音波を送受信するトランスデューサーはSP1,SP2,SP3の三つがあって、それぞれのトランスデューサーの間を往復する超音波の六つの伝達時間を順に計測します。各計測手順をシーケンスと呼ぶことにします。
六つのシーケンスに0から5までの番号を振って、
Seq:0 SP1->SP2
Seq:1 SP1->SP3
Seq:2 SP2->SP3
Seq:3 SP2->SP1
Seq:4 SP3->SP1
Seq:5 SP3->SP2
とします。
これら各シーケンスの信号波形をオシロスコープで観察することで不具合か所をある程度絞り込むことができます。
回路図はこちらを参照ください。WM10-A回路図

WM10-A基板にはA, B, C の三つのテストピンスルーホールが用意されています。
このうち、BにオシロスコープのCH1、AにCH2(またはEXT trigger)をつなぎます。
秋月電子通商さんで売っているスルーホール用テストワイヤを使えばチェックピンを立てなくてもつなぐことができます。
オシロスコープのGNDはS1のネジに繋ぎます。
クリップでくわえやすいようにラグ端子などを取り付けておくとよいでしょう。
WM10-AをFT232RLでパソコンのターミナルソフトに接続すると3成分風速と気温、風向風速データーが送られてきます。
テストモードにするためターミナルソフトから以下のように操作します。
$Rとタイプすると32ワードのフラッシュメモリー設定データーが表示されます。
英字は大文字を送信してください。 改行は送りません。
エコーバックはありません。
$W030000とタイプして自動リスタートを解除します。
もう一度$Rとタイプすると4番目の設定値が0005から0000に変わっているのが確認できます。
変更した設定値は次のリスタートから有効なので、$Zとタイプしてリスタートさせます。
コマンドの詳しい説明はWM10-A説明書をご参照ください。
リスタートしたら、$XSとタイプしてテストモードにします。
テストモードでは風向風速の数値は正しい値になりませんので無視してください。
風向風速測定結果のNMEAセンテンスの前に、0T1P1などの5文字が追加され送られてくるようになります。 先頭の1文字はシーケンス番号で0から5まで3秒毎に変わります。
オシロスコープの掃引時間を100us/divにし、CH1の電圧感度は1V/divにしてください。
CH2はトリガ用なのでトリガ設定をCH2にし、トリガ電圧は1Vと4Vの間(2.5V)で立ち下がりトリガにしてください。
トリガ位置を左側に持って行くと左図のように信号波形が観察できます。
トリガ位置から始まっている左側の波形は超音波送信のバーストパルスが見えています。
真ん中あたりの波形が受信した超音波信号です。
トランスデューサーの感度はかなりばらつきがあるので、受信波形はかなり振幅が小さくなる場合があるかもしれませんが、3Vp-pくらいあれば問題ありません。
以下シーケンス0の波形を例に典型的な接触不良の場合を紹介します。
トランスデューサーSP1への配線経路が切れている場合、左のようにシーケンス0の波形で送信パルスが観察されなくなります。
マイコンの2番ピン3番ピンからSP1に至るまでの配線経路に問題があるか、SP1の故障が疑われます。
他のシーケンスでこのような波形になるときは、対応する送信側トランスデューサーへの配線経路の不具合が疑われます。
トランスデューサーSP2への配線経路が切れている場合、超音波が受信されないため左のようにシーケンス0の波形で送信パルスだけが観察されます。
R7あるいはR8の配線が芋ハンダなどで切れている場合、送信信号がアンプの手前で途切れるため、左のように送信パルスの位置に小さなパルスが観察されます。
R9の配線が芋ハンダなどで切れている場合、アンプのオフセットが下に外れるため、左のように下側に偏った波形が観察されます。
R13の配線が芋ハンダなどで切れている場合、アンプのオフセットが上に外れるため、左のように上側に偏った波形が観察されます。
R10の配線が芋ハンダなどで切れている場合、アンプが機能しなくなり、左のような波形が観察されます。
R11の配線が芋ハンダなどで切れている場合もアンプが機能しなくなり、左のような波形が観察されます。
WM10 ホームに戻る