PARAWIND Laboratory
掲載:2011年10月14日 | 最終更新:2012年2月12日

超音波風向風速計モジュールの製作

簡易な構成の超音波式風向風速計モジュールを製作しました。

電子工作で広く利用されている超音波センサーのAT40を4個と8ビットPICマイコン1個、および一般的なオペアンプやロジックICなどのICチップ13個で主な電子回路が構成されています。
16桁2行のLCDパネルと共にプリント基板1枚に超音波センサー以外全部を実装して、超音波風向風速計モジュールといった形にしました。
さらに、モジュールの機能を確認するため、簡易な実験機を試作しました。

このモジュールを目的に応じた形でケースに納め、電源を用意することで、ハンディ風向風速計や風向風速ロガーを製作したり、RS232Cケーブルでパソコンなどに接続して本格的な風向風速測定器を作ることができます。
通信仕様は独自の通信フォーマットの他に、計測機器通信フォーマットとして一般的なNMEA0183フォーマットにも対応しています。

超音波風向風速計ブレッドボード ブレッドボードを使って動作検証と回路の修正をして最終的な回路を決定しました。
ブレッドボードのままではフィールドテストしづらいので、実験機を複数製作することを想定してプリント基板を起しました。
LCDパネル以外の部品を実装した状態のプリント基板です。
超音波風向風速計プリント基板 LCDパネルを実装した状態です。
LCDパネルはマイコンの上に乗っかるような位置になります。
超音波トランスデューサーとピンソケットをシールドケーブルで配線したものを4個製作しました。
ピンヘッダーとピンソケットをコネクターとして使っています。
超音波スピーカ/センサー:AT40-10PB 秋月電子通商
超音波風向風速計実験機 ホームセンターで購入した化粧ボードの上にL金具とアルミ材を使って超音波トランスデューサーを支え、プリント基板を木ネジでスペーサーを挟んで留めて実験機にしました。
超音波トランスデューサーはゴムのグロメットを使ってアルミ材に開けた穴に取り付けました。
安定化電源付きACアダプタとパソコンと通信するための3WireのRS232Cコネクタも取り付けました。

ACアダプタ:NP12-1S0523 秋月電子通商
音速を約330m/Sとすると、0.1mの距離では約300μS後に受信機に音波が到来します。
オシロスコープで受信した超音波波形を観測すると、発音した時点から約300μS経って受信波形が現れるのが観察されます。
発音した超音波が対向するセンサーに到達するまでの時間を精確に測定できたら、後は簡単な計算で風向と風速を求めることができます。
風速は小数点以上二桁、小数点以下二桁で表示するようにしました。左上が瞬間風向風速、左下が平均風速の測定を開始してから現在までの最大風速とそのときの風向。右上の-00.54はX軸成分の風速、右下の-00.12はY軸成分の風速、さらに右上のB8は平均風速を測定する時間を数える16進のダウンカウンターです。
無風の状態では各成分風速はそれぞれ0になるはずですが、単純に音波の到達時間から計算した成分風速は少しずれた値になっているようです。
おそらく、超音波センサーや受信アンプの特性のばらつきが影響していると思われます。
だとすると固定の誤差が発生していると考えられますので、無風の状態で一分間蓄積した成分風速を平均して補正値にすることにしました。
このため、製作後一回はキャリブレーションをすることになりました。
キャリブレーションすると無風の状態の成分風速は0に近い値になりますが、小数点以下二桁目はころころと値が変わってしまいます。
サンプリングクロックが20MHzですので、センサー間距離が0.1mの場合、量子化誤差は0.07m/Sとういう計算になります。 ノイズの影響による誤差も考えると0.1m/S程度の誤差が発生すると思われます。
左の写真では成分風速をベクトル計算して風速のスカラー値を計算すると0.1m/sになって表示の瞬間風速と一致していますが、瞬間風速は過去3秒間の平均値をとったもので、成分風速の表示よりも過去の情報のため、必ずしも一致するとは限りません。
測定結果をシリアル通信ケーブルから読込めるようにしました。
パソコンに接続してターミナルソフトを使って読込むと左図のようになります。

パソコンのUSBポートには、RS232C-USB変換ケーブルを使って接続しました。

USB・シリアル変換ケーブル:秋月電子通商
モードピンの切り替えによって、リアルタイムの瞬間風速をNMEA0183準拠フォーマットでRS232Cポートに送り出す機能も搭載しました。
NMEA規格では通信速度が4800bpsと決まっているので、このモードでは4800bpsで送信するようにしました。
パソコンで受信するとこのようになります。
超音波風向風速計実験機風向テスト ヘアドライヤーで風を当てて、正しく風向表示するか試しました。 合格です!
超音波風向風速計実験機電池駆動 次は単三電池6本と5Vに安定化するための電源基板も取り付けてフィールドテストを可能にしました。
超音波風向風速計実験機フィールドテスト 屋外に持ち出してフィールドテストしてみました。
できるだけ素直に風が通る場所ということで、近所の立体駐車場の屋上を選びました。
LCDパネルは横から見られるようにケーブルで引き出してあります。
超音波風向風速計実験機フィールドテスト 方位をあわせて設置します。
(ただ置くだけですが)
超音波風向風速計実験機フィールドテスト リファレンス用に購入した市販の風速計と比較すると、概ね同じ測定結果が得られているようです。
屋外の自然の風では風向も風速も安定しないので正確な検証はできません。 本当は風洞実験などで正確な測定をしたいのですが・・・
10分間隔で1時間半ほどログをとった結果です。
LCDパネルで1データづつ見ることもできますが、パソコンで読込むと一覧で見ることができます。
4%から始まっている行がログデータで、2行目では2項目めの01が一つ目の10分後データで、平均風向風速がS,1.0m、最大瞬間風向風速がWSW,3.6mとなっています。
読み込んだデータのフォーマットは技術資料の取扱い説明書に記載しました。
超音波風向風速計実験機強風テスト 強風のときも正常に計測できるか確認するため、車の屋根にくくりつけて走ってみました。
瞬間風速の設定は1秒にし、LCDパネルを長いケーブルで引き出し、スピードメーターの下に貼り付けてデジカメで動画撮影しました。
風向風速計の北方向を車の前方に合わせたので、走行中は常に風向はNになります。
スピードメーターの読みから計算した風速よりはかなり低い値が出ていますが、速度80km/hまで、風速がリニアに変化する様子が観察されました。



まとめ

近接センサーなどに用いられる安価な超音波トランスデューサーと簡単な電子回路と1チップ8ビットマイコンを用いて風向風速の測定ができることがわかった。

音波の伝達時間の測定は高い精度が必要なため、対向するセンサーの距離を近くして明瞭な波形を得られるようにする必要があるが、あまり近すぎると量子化誤差が大きくなり、またセンサー自体と、その支持構造体が風の障害物となって測定精度が低下する。 実験に用いたセンサーと回路においては10cm程度の距離がバランスのよい距離だった。

超音波センサーや受信アンプの特性のばらつきによる固定誤差を吸収するために無風時のキャリブレーションを行う必要があった。

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